揉め事を扱う事が多い法律事務所だからこそ縁ディングノートの必要性を感じる事5

1法律事務所は相続発生後の問題の予防も得意

筆者は法律事務所に20年勤務し、現在は法律事務所内の相続コンサルタントとして活動をしております。毎回、事前に相続対策をしたことにより、ご相談者様の想いをきちんと伝えられ、「家族がスムーズに相続手続きができた事案」について実際にあった事例(お名前、家族構成等は実際と違います)を元にお伝えしていきます。この年末、筆者の友人が他界しました。そこで、今回は、改めて「縁ディングノートがグリーフケアになり、残された人に対して必要なものになった」というお話をさせていただきます。

2 家族構成と背景

今回のお話は、少し前にはなりますが、末期がんの花子さん(80歳)がその夫の太郎さん(83歳)とその子どもたちに残した小さなノート(縁ディングノートの代わり)のお話です。

家族構成は、太郎さんと長男(45歳)と次男(43歳)の4人家族です。太郎さんは75歳までお仕事をされていて、花子さんはおうちのことをすべて切り盛りしていたため、太郎さんは料理、洗濯、掃除とほとんど何もできない方でした。

長男と次男はそれぞれ結婚し独立していて、とても仲の良い家族です。

3 終活・相続の便利帖の特徴

通常のエンディングノートは、主に目に見えるもの、たとえば財産をまとめるための一覧表を作成したり、自分の最期をどのように迎えたいかを記載したりしているのが多いです。しかし、筆者たち縁ディングノートプランニング協会で使っている「終活・相続の便利帖」は、冊子が厚い分、想いを伝えることができる箇所を厚くしています。この「想いを伝えること」はとても大切で、これがあるから「争族にならなかった」とか、「お母さんがどういう想いで筆者たちを育ててくれたかわかった」というような結果を生み出すのです。

4 想いはなかなか伝えられない

ただ、難しいことに、生前に家族への想いや感謝はなかなか伝えられません。なぜならば、「伝えることによって、安心して生きる気力をなくしてしまうのではないか」と思うからです。

花子さんは、肝臓がんに罹患し、何度も入退院を繰り返していましたが、最期の入院まで、生きることをあきらめていませんでした。最期の入院時は、おなかに水が溜まってしまい、「もうだめかな」と思って身辺整理をされていました。

その中の一つが、「太郎さんへのノート」です。残された太郎さんが一人で困らないように、レシピや生活のコツなどが書かれたものです。

例えば、「シャツのアイロンかけは、襟、胸のあたり、そして袖口をきちんとしていたら大丈夫よ」とか、お料理好きな花子さんが、太郎さんの大好物のお味噌汁、魚の煮つけや肉じゃが、栗きんとん(太郎さんは栗の皮むきをよくお手伝いされていたそうです)など、太郎さんの好きなものを書き記したレシピです。花子さんが書けなくなってからは、病院のベッドの上から口頭で太郎さんにお話をされ、太郎さんが書き記していました。そんなノートが太郎さんへのノートです。

太郎さんは、花子さんが亡くなった後、花子さんのレシピを見ながらお料理を作っていました。いろんなことを思い出しながら、時には笑顔で、時には涙をしながら作っていたんでしょうね。太郎さんは今でもお元気で、時よりそのノートを覗いているそうです。そんな素敵なページが、「終活・相続の便利帖」にはあるのです。

4 想いは生きつづける

実はこの花子さんは、主人の母です。そのころは「終活・相続の便利帖」は存在していなくて、もしあったら使ってもらいたかったなと思います。このノートは本当に義父の支えになりました。「栗きんとんを作ったから持ってきた。でも母さんみたいには作れないなぁ」と言いながらオフィスへ届けてくれたこともありました。このノートは、父が他界した後、兄、そして大好きな孫たちへ引き継がれていくことでしょう。今年は母の13回忌になります。一区切りにはなりますが、母のレシピ、母の想いはこれからも生き続けていきます。

(文責:理事 竹内みどり)