任意後見契約とライフプラン
認知症や障害のために、判断能力が低下した場合に、財産管理や手続代理をすることで、その方の生活を守るのが、成年後見です。
今回は、その中でも、ご自分の判断能力がしっかりしているうちに行う任意後見契約についてお話しします。
任意後見契約を締結する際に重要なのが、「ライフプラン」です。
これは、将来のご自身の生活や医療、介護、住まい、財産管理の考え方などについて、あらかじめ計画を立てておくものです。
成年後見制度には、3つの基本理念があります。
① 自己決定権の尊重
② 現有能力の活用
③ ノーマライゼーション
ライフプランを考えて、任意後見人と共有しておくことは、特に「①自己家定見の尊重」との関係で不可欠です。
判断能力が衰えたからといって、なにも感じられなくなるわけではありません。ある程度の判断はできても、それを巧く表現することが難しくなることもあります。
そういった場合に、自分がどのような生活を送りたいか、入院や終末期医療、介護サービスや施設入居の有無に関する希望、財産管理の方針などを事前に計画することで、ご自身の意思を尊重した生活を送ることができます。
そして、そのことが、将来の不安を軽減し、自分が望む形で支援を受けられるという安心感を持つことができます。任意後見を、よりご本人主体の制度とするのが、このライフプランです。
従って、任意後見契約を締結する場合には、同時に、ライフプランを一緒に考えていく、ということが大事になってきます。
成年後見人や周囲の家族や支援者も、このライフプランがあることで、ご本人の要望に添った支援をしていけるため、大木は負担軽減になります。
このライフプランを一緒に考える上で、とても役に立つのが、エンディングノートです。
エンディングノートの役割のひとつに、自分の希望について伝えておく「連絡帳」の役割があります。
おひとり様、という言葉が一般化してきた近年では、任意後見契約のニーズも高まっています。
しかし、よく知らない制度は近づきがたいものです。「任意後見契約を締結するためにライフプランを考えましょう」とすると、どうしても、堅苦しく考えてしまいがちで、敷居も高くなります。
しかし、エンディングノートであれば、取り組みやすく、介護や医療の指針などの他にも、ご自身の想いや価値観、心情的な要望を詳細に残すこともできます。たとえば、「自分は果物が好きである」「この音楽をかけてほしい」といった個人的な希望も記すことができます。
また、エンディングノートは定期的に更新が可能です。ライフステージの変化や価値観の変化に応じて記載内容を調整することが容易です。
エンディングノートを書いてみて、そこにどのようなご自身の将来の姿を見いだすか。まずは、そこから初めて見てもいいかもしれません。
(文責:理事 徳武聡子)