遺言+縁ディングノート=笑顔の相続

筆者はこれまで遺言があったばかりに揉めてしまったご家庭を何度か見てきました。
今回のコラムでは、揉めないために書いた遺言で揉めてしまう現実をどう回避すればよかったのかを考えてみたいと思います。

遺言では自分の財産を誰に相続させたいか、あるいは遺贈(あげたいか)したいかを
書くことで、それを自分が亡くなった後に実現することができます。

例えば、お世話になった長男の嫁に少しでも財産を分けてあげたいと思えば、
「現金300万円を長男の嫁である○○に遺贈する」とすればいいわけです。
実際に揉めてしまった例の遺言はこう書かれていました。
「自宅不動産は同居している長男○○に現金2000万円は長女○○に相続させる。」
ただ、この方の場合、自宅の価値が売っても500万円にしかならず、長男にしてみれば、親の面倒をみたにも関わらず、売ることもできない、売っても価値のない自宅不動産だけでは納得できない。となり、遺言の内容では遺留分(遺言があっても最低限もらえる権利、この事例の場合は長男は最低625万円)を請求し、長女と揉めました。

逆にこういう事例もありました。
「私の財産は全額同居していた長女〇〇に相続させる。」
いかにも揉めそうな遺言ですよね。しかも自筆証書遺言です。

しかし・・このケースは揉めていません。
何故ならば、遺言を残した母が縁(エン)ディングノートを家族と書き、きちんと理由を自分の口でも話したうえでノートに書き記していたからです。
家族への想いを書き残すページにはびっしりと母の想いや考えが残されていました。

以下、少し私の方で要約した内容でご紹介します。
「○○ちゃん(長女)あなたは、身体も弱く社会で働くことができず、パパやママより先に死んじゃうんじゃないかと随分と心配をしました。医学が発達したこともあり、逆縁とならず生きてくれたことを本当に嬉しく思っています。
それでも、結婚もできていないしママの心配は尽きません。
それに身体は弱いけど心優しく育ってくれて、妹の○○ちゃんが産後大変だった時は、家事を手伝ってあげたり、美容院に行きたいと言えば姪っ子を預かったりと気配りをしてくれましたね。パパが認知症になった時も嫌な顔一つせず、下の世話までしてくれて・・
パパもママも感謝してるわ。ありがとう。
○○ちゃん(次女)あなたは、裕福なお家に嫁ぎ、お金の心配は何もないと思います。
あなたのこともお姉ちゃんと同じようにパパもママも愛してきたけど、お姉ちゃんは結婚もしてないし、老後もあなたたち夫婦に面倒をみてもらわなくてもいいようにとママの財産は全てお姉ちゃんに遺してあげたいと思いました。日頃からあなたとは何度もお話をして理解してくれているとは思うけど、最後のママのお願いをきちんと文字にして残しておきます。どうか、遺言のとおりにお姉ちゃんに全てでお願いね。

二人とも、愛しているわよ。
むこうにいってもパパとママは二人のことをずっと見守っているからね。
また、いつかあちらで再会する日までバイバイ。 ママより」

いかがですか?
勿論、この事例の姉妹はお墓参りをされたり食事をしたりと仲睦まじく暮らしています。
是非皆さんも【遺言+縁ディングノート=笑顔の相続】を実現してください。

 

(文責:代表理事 一橋香織)