春のお彼岸に思い出す祖母の味
春になると、無性に食べたくなるものがあります。それは、祖母が作ってくれた「ヨモギの蒸しパン」です。
お彼岸の頃になると、祖母と一緒にお墓参りを兼ねて山菜摘みに行くのが楽しみでした。おばあちゃん子だった筆者は、祖母と一緒に外出できることが嬉しくて、ワクワクしながら出かけたことを思い出します。
この時期に摘む山菜は、ヨモギ・セリ・ツクシが主でした。特に、本家の近くを流れる小川の土手や野原には、これらの山菜が豊富に生えていました。
祖母は山菜の見分け方を優しく教えてくれました。
「香織ちゃん、ヨモギにはオスとメスがあるのよ。メスの穂先の柔らかいところだけを摘みなさいね。」
そう言いながら、祖母は丁寧にヨモギの選び方を教えてくれました。
摘んできたヨモギで祖母が作る蒸しパンは、それはもう絶品で、幼い頃の私の大好物でした。
祖母の作り方を思い出すと、まず何度も灰汁を抜いたヨモギを茹で、細かくみじん切りにした後、すりこぎで丁寧にすり潰します。そうしてできたヨモギを小麦粉に練り込み、甘みを加えて蒸し上げるという感じだったように思います。
今思うと、かなりの手間がかかる作業だったはずですが、祖母はいとも簡単そうに作っていました。手際の良さと、あふれる愛情がこもったおやつは、子供心にも深く刻まれています。
祖母が亡くなった後、お彼岸の頃になるとその味を思い出し、何度か「ヨモギの蒸しパン」を再現しようと挑戦しました。
しかし、どうしても祖母の味にはなりません。特に甘味の決め手が分からず、砂糖でも蜂蜜でもないことは分かるのに、何を使っていたのかが思い出せないのです。
似たような味にはなるものの、やはり「祖母の味」ではない――。
なぜ、生前、祖母が元気なうちにレシピを聞いておかなかったのかと悔やまれますが、もう遅すぎます。
皆さんにも、そんな思い出の味や、大切に伝えたい家庭の味はありませんか?
実は、私が監修した縁ディングノート『終活相続の便利帖』には、「我が家の味」を書き残せるページがあります。これは、私自身の苦い経験から生まれたものです。
そういう意味でも、お彼岸はほろ苦い思いとともに、懐かしい祖母を偲ぶ季節。
今年もまた、お彼岸には祖母の味を再現すべく、ヨモギを摘んで「ヨモギの蒸しパン」に挑戦しようと思います。
(文責 代表理事 一橋 香織)