相続手続のプロである司法書士が、『縁ディングノート』で伝えたいこと
1.はじめに
「どうして、縁ディングノートプランナーの活動をされているのですか?」
とここ最近よく質問をいただきます。
筆者は、遺言や相続登記などの相続手続のプロである司法書士として、10年以上相続案件に携わってきました。
また、筆者自身も辛い相続を経験しているので、当事者としても、専門家の立場としても、相続手続きの大変さと奥深さを実感しています。
相続とは、亡くなった方の「想い」を「遺して、実現すること」だと私は解釈しています。「想い」をきちんと伝えないと、手続きだけでは解決しないのが相続です。
この「想い」を見つめることと、遺すことに大いに役立つのが縁ディングノートです。
2.筆者の相続の経験談
筆者が16歳の時に、父がガンで他界しました。当時父は53歳。母と未成年の子供3人が残されました。
父は遺言を作成していなかったので、相続人間で遺産を誰にどう分けるかの遺産分割協議を行う必要がありました。我が家の場合は親権者である母が未成年の子を代理して遺産分割協議をすることができなかったので、家庭裁判所に特別代理人を選任してもらうことが必要でした。
さらに、母は父と土木の会社を共同経営していたので、会社の経営を引き継ぐ傍ら、父の遺産分割の手続も並行して行わなければならず、その負担はさぞ大きかったことと思います。悲しみを感じて落ち込む時間すらなかったと、当時を振り返って話してくれたこともありました。
一方筆者は、父と十分に話ができないままだった後悔が何年も残りました。
進学の時、社会人になった時、その他、人生の困難に直面した時、
お父さんならなんて言ってくれただろう?
それが想像できないことが辛かったです。
「頑張れ」でも「大丈夫だよ」でもいい。何か一言あれば、その時々の自分の支えになっただろうな、と思います。
3.実際の相続手続きのよくあるパターン
筆者のもとに相続相談に訪れる方々は、遺言がなく、相続人の間で遺産の分け方について話ができていないケースが大半です。
その多くが、話し合いの中心となる人物が自分にとって都合のいい分け方でまとめようとしているケースで、平等に分けたいと思っているケースでも、亡くなられた方はどう分けてほしかったのだろうという想いも伝わらなければ、遺産の全体像も見えないためお互いに不安を募らせて争いに発展し、司法書士としてはサポートできない場面も出てきます。
こうなってしまう原因はコミュニケーション不足にあります。
ここが、縁ディングノートで解決できるのでは、と筆者は考えています。
亡くなられたご本人からのメッセージというのは、何よりも大きな効果を持ちます。ただ、「今はまだ元気だから」「まぁ、そのうち」と先延ばしにされる方も多いように思います。それに加えて、近しい家族からは「相続のこと考えてくれてる?」と言い出しにくいのが現状です。
だからこそ、我々縁ディングノートプランナーが「ちょっとおせっかいな他人」として関わって、ご本人の想いを遺すことの大切さを感じてもらい、家族のご縁を繋ぐ橋渡し役となれたらと思っています。
さらに、縁ディングノートの面白いところは、書き始めは自分がいなくなった後、家族や大切な人が困らないようにという想いでいたのが、書いていくうちに、
「死ぬまでにあれもしたい、これもしたい。明日からどう生きよう。」と、自分の人生にワクワクした期待を持つような気分になるところにあります。前向きな気分で日々を過ごせるようになるところがもう一つの本質だと思います。
4.おわりに
人は誰しも、人生の終わりのタイミングをあらかじめ知ることはできません。
「明日が来ることは奇跡。後悔しない今を生きてほしい。」
という言葉が、筆者が一番伝えたいメッセージです。それは司法書士としてではなく、縁ディングノートプランナーだからこそ伝えられるのではと期待しています。ぜひ、自分を見つめ直すためにも、縁ディングノートを手に取って、これまでの自分の人生や大切な人の顔を思い浮かべながら書いてほしいと思います。
【筆者プロフィール】
姉川 智子(あねがわ さとこ)
司法書士(佐賀県司法書士会所属)
笑顔相続道®正会員
縁ディングノートプランナー
宮崎県出身。福岡大学法学部卒。平成21年司法書士試験に合格後、博多や東京にて司法書士業務に従事(司法書士歴12年)。令和5年より、佐賀県鳥栖市にてあねがわ司法書士事務所を開設。相続登記、不動産登記の他、親族トラブルへの相談対応も多数。1男1女の母。
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